レスリングの女子世界選手権最終日は13日、東京・国立代々木競技場で行われ、55キロ級決勝で吉田沙保里(26=綜合警備保障)がテチアナ・ラザレワ(ウクライナ)の途中棄権により勝利し、女子史上最多となる6連覇を達成した。北京五輪72キロ級銅メダリストの浜口京子(30=ジャパンビバレッジ)は準決勝で洪雁(中国)に0―2で敗戦。03年以来の世界一奪還に失敗したものの、3位決定戦でオチルバト・ブルマー(モンゴル)に逆転勝ちし、2大会ぶりのメダルを確保した。
慎重な姿勢が、進化の証だった。決勝の相手は02年、初出場の世界選手権で対戦したラザレワ。「ものすごく力が強い印象があった」。第1ピリオドは1―0と安全運転に徹したが、第2ピリオドは相手の力量を測った上で攻勢に出た。結局、5―0となった場面で左ひざを痛めた相手が棄権したが「しっかり(タックルに)入ればポイントが取れる。自分もパワーがついたな、と実感しました」と笑った。
五輪後の多忙で、調整不足は明らかだった。「8月は全く練習できなくて、9月もできたりできなかったりだった」。さらに、対戦選手はほぼ全員が無名。特別コーチとして帯同した父・栄勝さんが「こんな“勝って当たり前”が一番怖い」と不安すら口にした。しかし、女王に常識は通用しなかった。初戦から3試合連続で第1ピリオドにフォール勝ち。「ジュニアの選手とかが多かったと思う。伸びてきているけど、まだ大丈夫だなと思った」と手抜きはしなかった。
栄和人監督は「とにかくただレスリングがしたいだけ。そこがいい」と評する。大会前には、予定になかった全日本合宿が2度組み込まれたが、文句一つ言わず自分を追い込んだ。最大のモチベーションは、北京五輪で連覇を達成した瞬間に約束した、日本女性初の五輪3連覇。「やっぱりここがロンドンへの第1歩だし、良かった。レスリングは楽しいっす。今は最高です」。純粋な思いこそ最大の武器という真理を証明した女王に、同監督は「連勝が119で止まって、五輪連覇を達成して、本当に強くなった。北京よりロンドンの方が(金メダルが)堅いような気がする」と最大級の賛辞を贈った。
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