2010年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選、対バーレーン戦を翌日に控えたサッカー日本代表は27日、試合会場の埼玉スタジアム2002で前日練習を行った。この日は日本もバーレーンも、冒頭15分のみの公開。となると、試合の行方を占うには、両監督の会見で発せられた言葉の中から類推していくしかない。
「明日のバーレーン戦は、この1年間で5回目の対戦になります。われわれとしては、何としても決着をつけたいと思っています」(日本・岡田監督)
「明日、日本が勝てば確実に上位2チームのポジションは確保するだろう。ただしW杯予選は2位にならなければ終わりということではなく、3位になればプレーオフの可能性もある。だからこそ、明日の試合は非常に大事だ」(バーレーン・マチャラ監督)
この両者のコメントを読む限り、ホームの日本は勝つ気満々、逆にアウエーのバーレーンは「3位でプレーオフに回れば恩の字」という印象を受ける。とりわけマチャラ監督は「わたしは日本代表を尊敬している」と言ってみたり、中村俊輔のセルティックでのプレーを持ち上げてみたり、実に殊勝なコメントのオンパレードだった。だが、相手は百戦錬磨の「中東の魔術師」。謙虚さを装いながら、日本の裏をかいて大金星を挙げるための秘策を練っていると見て間違いないだろう。
対する日本も、100パーセント勝ちにこだわるかどうかは微妙なところである。「引き分け狙いというのは、多分ありません。最後まで勝ち点3を取りにいく」と語る岡田監督。だが、試合展開によっては無理せず引き分けに持ち込んで、相手に勝ち点2を与えないという選択肢も放棄すべきではないだろう。無論、勝つに越したことはない。
しかし、最も優先すべきは予選突破であり、3位チーム(すなわちバーレーン)との勝ち点差をキープすることもまた、ひとつの方策である。「蛮勇にならないようにリスクを冒していきたい」とする岡田監督の言葉の裏には、そうした指揮官の冷徹な判断が透けて見える。
確かに日本は、この1年でバーレーン相手に2勝2敗しており、この最終予選ではまだホームでの勝利がない。それらのネガティブな要素がプレッシャーとなって、日本の足かせとなる可能性は十分に考えられる。もちろん応援する側としては、やはり力の差を見せつけた勝利を望みたいところだ。だがそれ以前に、相手の術中にはまって勇み足となり、足をすくわれることだけは何としても避けなければならない。
おそらくマチャラ監督は、日本とバーレーンとの実力差を認めた上で、さまざまな形での“心理戦”を仕掛けてくるだろう。換言するなら、彼らがアウエーで勝ち点を稼ぐ手段は、もはやそれしか残されていない。よって日本が最も警戒すべきは、相手の巧みな誘導によってリスクが蛮勇にすり替えられる、まさにその瞬間なのである。
-Tetsuichi Utsunomiya-
[ スポーツナビ 2009年3月28日 11:15 ]
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