世界ダブルタイトルマッチ(10日、代々木第2体育館、観衆=3200)一撃必殺だ! 王者・西岡利晃(33)が、挑戦者イバン・エルナンデス(26)のあごを粉砕し、3回終了TKO勝利で下し、3度目の防衛に成功した。3連続KO決着で、悲願のラスベガス進出へ弾みをつけた。
会心の感触が拳に伝わる。3回2分過ぎ、挑戦者の右をかわした西岡が、左フックを相手の顔面にたたき込む。同回終了後、挑戦者のあごが骨折している疑いが判明し、そのまま棄権。この一撃で王座を守った。
「結果的に防衛できてうれしいけど、スッキリしない内容だった」。晴れやかな笑顔はない。だが、33歳のベテラン王者は着実にフィニッシュブローに磨きをかけている。試合後、病院へ直行して検査を受けた相手は「下顎(かがく)骨骨折」と診断された。
この試合では、王者に選択権のあるグローブを日本製よりナックル部が薄いメキシコ製を選んだ。左パンチの破壊力に自信があったからこそ。メキシコ製では、これで8連勝(7KO)だ。
想定外のプレッシャーが押し寄せてきた。これまで27戦全勝だった、同じ帝拳ジムに所属するリナレスが試合直前によもやの1回TKO負け。同僚の悲痛な表情を見た。7月に後輩の粟生(あおう)隆寛(25)がWBC世界フェザー級王座から陥落。リングに向かう時点で、西岡がジムでただ1人の世界王者となっていた。「ボクシングは何が起こるか、わからない。試合に集中しようと思った」。これが8度目の世界戦。培った集中力が、わが身を救った。
帝拳ジムは、元世界6階級制覇王者オスカー・デラ・ホーヤ氏(米国)が運営する、ゴールデンボーイプロモーション(GBP)と業務提携している。会場にはGBP関係者も訪れ、観戦。評価はさらに上昇した。V4戦の相手には元世界2階級王者ラファエル・マルケス(34)=メキシコ=が浮上。ビッグネームとの防衛戦なら、悲願のラスベガスでの試合も現実味を増す。「強い相手と闘って、ビッグファイトに挑戦していきたい」。また一歩、ボクシングの聖地へ近づいた。