プロボクシングのダブル世界戦の前日計量が15日、都内で行われ、出場する4選手はそれぞれ一発でクリア。7度目の防衛を狙う王者・長谷川穂積(27)はリミットいっぱいの53.5キロ、挑戦者アレハンドロ・バルデス(24)は53.3キロだった。長谷川は先月末に亡くなった祖父・賢(まさる)さん(享年84)に手向けの白星を届ける。
安定王者らしい、余裕をみせつけた。約100グラム、シルバーのペンダントを首から下げたまま、長谷川がスケール(秤)に乗る。計算尽くされたように、リミットちょうどで針がとまった。小さなガッツポーズをとって、笑顔が広がった。
身長で5.8センチ、リーチで9.2センチ上回る挑戦者を見上げながら、「大きいけど、威圧感はまったく感じない。縦に細長いだけだね」。世界戦では初めてとなるサウスポーとの対戦にも、不安はない。左構えのパートナーと、過去最高となる135回のスパーリングを消化し、「先手を取って、最初から仕掛ける。ボディーを打って下から入り、KOのチャンスをつくっていく」。戦略も隠さなかった。
大好きだった祖父・賢さんが先月27日、老衰のために亡くなった。プロボクサーだった父・大二郎さん(53)を育てた頑固者で、都会にあこがれた長谷川が高校を中退し、家出をしたときにも反対はしなかった。褒められたことはなかったが、長谷川も列席した29日の葬儀の席上、関係者から「おじいさんは生前、いつもあなたのことを自慢していた」と聞かされ、絶句。涙ぐんだままジムに戻り、サンドバッグに拳を叩きつけた。
昨年末から祖父の具合は悪かった。1月のV5戦は長谷川のジム移籍問題もあり、8カ月ぶりの試合でもあったため、苦戦を強いられたが、「祖父を元気づけるためにも負けられなかった」と逆襲した。
06年3月の2度目の防衛戦で、前WBC世界バンタム級王者ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)と再戦し、KO勝ちで退けた試合が祖父が会場で観戦した最後のファイトだった。「今回はベルト持参で墓参りに行くためにも、勝たなあきません」。天国から見守る祖父に、勝利の雄叫びを届けてみせる。
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