戦極第十陣(23日、さいたまコミュニティアリーナ)アテネ五輪柔道男子90キロ級銀メダルの泉浩(27)が、アンズ“ノトリアス”ナンセン(26)=ニュージーランド=に1R2分56秒、KO負け。総合格闘技デビュー戦で流血の惨敗を喫した。プロ転向からわずか2カ月ながら試合中は打撃にこだわり、寝技を封印。観戦した北京五輪100キロ超級金メダルの石井慧(22)に、プロの厳しさを身をもって伝える結果となった。
総合格闘技の洗礼を浴びた。リング上で柔道着を脱いだ泉は左右からフックを繰り出し、一時はナンセンをコーナー際へ追い込んだが、スタミナが切れると形勢逆転。右フックを食らって倒れ、立ち上がったところで左フックを被弾。最後は左フック、右ストレートをワンツーで食らい、鼻血まみれで力尽きた。
「殴り合いを一つのテーマとして取り組んできた。それが総合格闘技だと思う」。入場曲は長渕剛(53)の「SAMURAI」を選択し、柔道着姿で花道に現れた。わずか2カ月の見切り発車となったプロデビュー戦は屈辱のKO負け。“侍”にはなれなかった。
試合を控え、都内の吉田道場へ出げいこし、打撃面を重点的に強化した。8月には鹿児島で空手特訓を行い、上段蹴りなどキック技術の習得に励んだ。短期間でやれることはやったが、勝負の世界は甘くなかった。
泉の惨敗は大みそかにバルセロナ五輪78キロ級覇者の吉田秀彦(40)と対戦する石井をも震撼(しんかん)させた。「打撃は素人の考え。自分ならどうするか練習の一環として見た」。この試合前には「吉田先輩のあごにパンチを浴びせる」と宣言したが、その考えを一変させるに十分な結果となった。
「目指しているものがある。早くたどりつけるようにしたい」と泉。戦極ではKO負け後、60日は試合に出場できず、次戦は早くても大みそか。畳の上ではかなわなかった世界最強の座へ、試練のスタートを切った。
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