坂本日登美が涙の復活V/レスリング
5月3日7時52分配信 サンケイスポーツ
全日本選抜選手権第2日(2日、東京・代々木第2体育館)昨年末に現役復帰した坂本日登美(29)=自衛隊=が女子48キロ級を初制覇し、9月の世界選手権(ロシア・モスクワ)代表に決まった。坂本は非五輪種目の51キロ級で世界選手権を6度制覇した実力者。48キロ級だった妹・真喜子さん(24)=現姓・清水=の引退に伴い、妹の階級で現役復帰し、2012年ロンドン五輪へ最高のスタートを切った。
“悲運の世界女王”が帰ってきた。初戦の1ポイント以外は相手にポイントを許さず、阿部千波(愛知・至学館高)との決勝は得意のアンクルホールドがさく裂。圧倒的な強さを見せ、第2ピリオド途中36秒で勝負を決めた。
「夢にまでみた五輪階級で復帰できてうれしい。妹が苦しんできた48キロ級を自分が受け継いで、五輪で金メダルを獲りたい」。場内インタビューでは涙があふれた。
夢舞台への思いを秘め、日陰の道を歩んできた。世界選手権を6度制した51キロ級は五輪階級でなく、55キロ級に階級を上げて挑んだ北京五輪の夢は“絶対女王”吉田沙保里に阻まれた。08年の引退後は女子代表のコーチも務めたが、消化不良の思いは消えなかった。
昨年9月の世界選手権(デンマーク)後、妹の真喜子さんから「お姉ちゃんが五輪を目指したほうがいい」と背中を押された。現役中から「マットの上で妹とは戦えない」と打ち消してきた48キロ級転級の決意は、真喜子さんの引退の決断と同時に固まった。
ジャンクフード好きだった食生活を見直し自炊に取り組み、今年1月には56キロあった体重を8キロ絞った。体脂肪率は18%から12%になり、逆に筋力を5キロ以上増やした。前日の計量後、手作りのおにぎりとケーキを差し入れた真喜子さんは、「お姉ちゃんは精神的に強い。背中がデカいと思う」と笑顔を見せた。
48キロ級には今大会欠場の北京五輪銀メダル、伊調千春(八戸西高教員)がおり、世界にも強豪ひしめくが、自衛隊女子の藤川健治コーチは「間違いなく世界のトップに位置する」と太鼓判を押す。「悔しかった気持ちも全部これからにつなげたい」と坂本。妹から受けたバトンを手にロンドンへの道を走る。
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