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三沢さん急死から一夜、ノアが博多大会を開催

三沢さん急死から一夜、ノアが博多大会を開催
「Southern Navig.'09」トピックス
2009年6月14日(日)

三沢さんの遺影を手に惜別の10カウントゴングを聴く小橋【スポーツナビ】

 プロレスリング・ノア三沢光晴さんの急死から一夜明けた14日、福岡・博多スターレーンに超満員となる2600人のファンを集めて「Southern Navig.’09」が開催された。ファンは声を枯らして応援し、選手も悲しみを振り払うように全力で戦い抜いた。

 三沢さんは13日に行われた広島グリーンアリーナ大会のメーンイベントに出場。対戦相手の齋藤彰俊のバックドロップを浴びた際、頭から落ちて動けなくなり試合はレフェリーストップに。その後、心肺停止状態の三沢さんへリング上で蘇生措置が施され、広島大学病院に救急搬送されたが、同10時10分に死亡が確認された。
■秋山は声を震わせ欠場謝罪

秋山が声を震わせながら欠場を謝罪【スポーツナビ】

 試合開始前には出場選手がリングを囲み、リング上に小橋建太、田上明、小川良成、百田光雄が上がって三沢さんへ惜別の10カウントゴングが鳴らされた。

 その後、腰椎椎間板ヘルニアにより急きょ今大会を欠場しGHCヘビー級王座を返上した秋山準が、声を震わせてあいさつを行った。

「自分の不甲斐なさに申し訳ない気持ちでいっぱいです。本来であればチャンピオンとして、三沢さん、そしてみなさんに最高のプロレスを見せないといけないんですが、今の自分にはそれができません」

 秋山は時おり声を詰まらせこう述べると、続けて「三沢社長と昨日(13日)、最後の最後まで一緒にがんばってくれた潮崎を、僕から指名させてもらいました」と潮崎に白羽の矢を立てたことを明かした。これにファンも大きな拍手で賛同し、最後に「選手・社員一同、三沢社長の遺志を継ぎ、一生懸命がんばりますのでプロレスリング・ノアをこれからもよろしくお願いします」と頭を下げ、リングをあとにした。
■潮崎、三沢さんに捧げるGHC王座初戴冠

潮崎が力皇を破り、GHCタイトル初戴冠【スポーツナビ】

 メーンイベントでは、ベルトを返上した秋山のGHCヘビー級王座をめぐり、力皇猛と潮崎豪が激突した。潮崎は4月19日に北海道・月寒アルファコートドームで同王座へ挑戦しており、今回は秋山の推薦を受けて2度目の同タイトルマッチに臨んだ。

 小橋や高山善廣らも見つめる中、ゴングが鳴るや両者は真正面からぶつかり合う。しかし、この日のために調整を進めていた力皇は、序盤からパワーにものを言わせ、潮崎を押しまくる。場外乱闘でも潮崎を痛めつけ、主導権を譲らない。
 それでも三沢さんの最後のタッグパートナーになってしまった潮崎は、その苦しみを逆水平チョップに込め、徐々にペースを取り返す。さらに、三沢さんの得意だったローリング・エルボーやランニング・エルボーまで繰り出して力皇を追い詰めると、最後はゴーフラッシャーでGHC王座獲得に成功した。

 新王者は「自分はまだまだ」という思いからか、ベルトは腰に巻かず肩にかけたまま。それでも喜びを爆発させてリングを下りると、真っ先に会場の一角にあった三沢さんの献花台へ向かう。そして遺影に向かって深々と一礼してから退場した。

 コメントブースに着くと小橋が「いい試合だったよ」と潮崎の労をねぎらい師弟がガッチリ握手。すると新王者の目にはみるみる涙が浮かび、三沢さんへの思いを語り始めた。「ここで俺がやらなきゃいけないと思った」と大きな使命感を背にリングに上がっていた潮崎。「社長が作ったGHCのベルトを失くしちゃいけない」と初代GHCヘビー級王者でもある三沢さんの“遺志”を手に入れて、よりいっそう同団体を背負う決意は深まったようだ。続けて潮崎は涙を流しながら「社長の前で取れてよかった。ベルトはすごい重かった」と口にし、王者としてノアをどうしていきたいかと問われるとしばし絶句。そして、声を震わせながら「ベルトを取ったからには、もっとノアをよくしていきたい。社長にも見ていてもらいたい」と天国の三沢さんに誓ってみせた。

 潮崎が去った会場内に三沢さんのテーマ曲「スパルタンX」が流れると、超満員のファンは一斉に大「ミ・サ・ワ」コールを天に届けとばかりに叫び続けた。潮崎豪、27歳。GHCヘビー級王座初戴冠。もう、お前しかいない――。

■最後の対戦相手・齋藤が涙の土下座

試合後、齋藤はリング上から本部席の遺影に向かって涙の土下座【スポーツナビ】

 第2試合には前日のGHCタッグ選手権で三沢さんの最後の相手を務めることになってしまった齋藤が登場。あふれ出る涙をこらえきれず、号泣しながら試合に臨んだ。

 入場口に姿を現した齋藤の顔は、すでに泣きじゃくっていた。責任を痛感し表情は疲れきっているものの、それでも気丈に振舞おうと涙をこらえ、リングに向かう。そんな齋藤の姿に、会場からは大きな「アキトシ」コールが。「彰俊泣くな!」「がんばれ!」とファンも涙声で必死に声援を送り、齋藤も何より三沢さんのために最後まで歯を食いしばって戦い抜いた。

 試合後、齋藤はリング上から本部席の三沢さんの遺影に向かって涙の土下座。ファンも痛いほど齋藤の気持ちは分かっており、拍手と歓声がいつまでも鳴り止まなかった。

 バックステージで齋藤は「取り乱してすみません。泣いている場合じゃないんですけどね」とコメント。そして「自分はどんなに重くて大きい十字架でも背負って、前進して、精進していきます!」と力強く天国の三沢さんに約束した。
■小橋、悲しみのノーコメント

小橋(上)が剛腕ラリアットで勝利。試合後はノーコメント【スポーツナビ】

 セミファイナルには小橋と三冠王者の高山が登場。6人タッグながら、お互いシングルマッチのように意識し合い、いつも以上に激しく殴りあった。
 小橋と高山は先発を買って出ると、いきなりチョップとエルボー合戦。その後、両チームのソバットやハイキックが飛び交う大乱戦を制したのは、三沢さんのライバルであり名パートナーだった小橋。右腕に天からのエネルギーを込めてラリアットを振りぬき、勝負を決してみせた。

 試合後、高山が歩み寄り小橋の右手を上げて、三沢さんの献花台に指を突き刺した。「俺たちはこれからもここで戦い抜く」という意思表示か。そして小橋は会場を見渡して大きく手を広げてから引き揚げ、報道陣を振り払うように足早に控え室に消えた。
■KENTA、三沢さんへの恩返し誓う

KENTAは普段どおりのファイトでファンを喜ばせた【スポーツナビ】

 ノアのジュニア・ヘビー級を引っ張る王者・KENTAは、同団体の向上こそが三沢さんへの最大の弔いになると語った。

 タッグマッチに出場したKENTAは試合後、元パートナー・石森太ニに対し“黒覆面”をめぐって生じた亀裂を修復しようと握手を求めたが、石森はKENTAを素通りして金丸義信と握手。これで「もう未練もなにもないわ」と“復縁”をあきらめ、新たなパートナー探しに着手する旨を明かした。

 その後、自分からノアの今後について静かに語りはじめた。

「社長に何が恩返しできるかといえば、ノアをもっともっといいものにする以外ほかに何もないし。社長もそれ以外、望んでいないと思うし。残されたみんなで、よりいっそう一丸となって……もう口だけじゃなく、ちゃんと本当にひとつの目標に向かって、これからやっていくことが必要になってくると思います」

 三沢さん急死の翌日とあり、試合どころではない精神状態かとも思われたが「つらいのはみんな一緒。対戦相手もそうだし、来ているお客さんもそうだし。でも、そのつらい僕らを観にお客さんは会場に来ているわけではないと思う。リングに立つ以上はプロレスラーとして責任を果たすこと……ですね」と強い意志を垣間見せていた。

■遺影とともに献花台を設置

三沢さんの遺影とともに設置された献花台に多くのファンが花をたむけた【スポーツナビ】

 この日、悲しみにくれる三沢ファンが多数来場し、声の限りを尽くして選手たちに声援を送った。試合開始3時間も前から当日券を求める長蛇の列ができており、三沢さんの死を信じられないといった感じでぼう然と立ち尽くす人も多数見られた。

 急きょ観戦することを決めたという31歳の男性は、三沢さんの訃報を知り「ショックでした」と言葉少なにうなだれた。そして、天国に旅立った三沢さんに対し「ありがとうございました」と数々の死闘を見せてくれた感謝を口にした。

 また、博多スターレーンの会場の一角には、三沢さんの遺影とともに献花台が設置された。多くのファンが涙を浮かべながら花束をたむけ、故人を偲んだ。
■死因は頸髄(けいずい)損傷

沈痛な面持ちで状況を説明する百田副社長【スポーツナビ】

 第1試合開始前には、同団体副社長の百田光雄が会見を開き、三沢さんについてコメントした。

 まずシリーズ中での悲劇とあり、今大会を含め中止も検討されたのではという問いには「三沢社長は常に満身創痍でやっていた。選手全員と話して『決行するべきでは』となった。三沢社長も(中止は)望んでいない」と強行開催に至る経緯を語った。そして、死因に関しては「僕たちも医師から『不明』としか伝えられなかった。検査した結果、脳や頚ついにも損傷はないという話しを聞いた。ただ、医師からは『家族以外には死因は説明できない。たとえ会社の方にも説明はできないので、家族の方に説明します』と言われました。したがって会社の人間は、医師の方から一切死因に関しての説明は受けておりません」とコメントした。

 三沢さんがこのような事態になる予兆はあったのかについては、「基本的に我慢強くて泣き言は言わなかった」としながらも、「多少『肩がキツイ』と言っていた」とかすかな異変はあったようだ。
 なお、遺体はすでに東京に移送されており、葬儀は家族の意向により選手・近親者による密葬となる予定。ただ、ファンにはあらためてお別れを言う場を作りたいと語った。

 その後、三沢さんの死因は頸髄(けいずい)損傷であることが判明した。

■プロレスリング・ノア「Southern Navig.’09」
6月14日(日) 福岡・博多スターレーン 観衆2600人(超満員)

<第7試合 GHCヘビー級選手権王座決定戦 60分1本勝負>
●力皇 猛
(22分37秒 ゴーフラッシャー→エビ固め)
○潮崎 豪
※潮崎が第15代王者となる。

<第6試合 6人タッグマッチ>
○小橋建太、田上 明、谷口周平
(20分24秒 剛腕ラリアット→体固め)
高山善廣(高山堂)、杉浦 貴、●佐野巧真

<第5試合 タッグマッチ>
○佐々木健介、森嶋 猛
(13分43秒 ダブルインパクト→体固め)
バイソン・スミス、●ボビー・フィッシュ 

<第4試合 タッグマッチ>
KENTA、●伊藤旭彦
(14分42秒 スーパースターエルボー→エビ固め)
金丸義信、○石森太二 

<第3試合 タッグマッチ>
○小川良成、リッキー・マルビン
(12分20秒 岩石落とし固め)
中嶋勝彦、●宮原健斗

<第2試合 タッグマッチ>
齋藤彰俊、●百田光雄
(9分56秒 顔面絞め)
モハメド ヨネ、○鈴木鼓太郎

<第1試合 タッグマッチ>
○クリス・ヒーロー、平柳玄藩
(11分19秒 エルボーパット→エビ固め)
井上雅央、●相島勇人
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