プロ格闘家に転向した北京五輪柔道100キロ超級金メダリストの石井慧(22=国士舘大)は27日(日本時間28日)、米ラスベガス市内の前UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)ヘビー級王者ランディ・クートゥア(45=米国)が主宰するジム「エクストリーム・クートゥア」を訪れ、クートゥア本人から直接指導を受けた。石井が積極的に申し入れたことで、異例の即日入門が実現した。また、MGMグランドガーデンで行われた「UFC92」観戦後には、UFC側が石井の独占交渉権を持つことで合意に達した。この模様はWOWOWで1月8日午前5時から再放送される。 【石井特集 UFC92試合結果】
まさにごり押し入門だった。正午すぎに「エクストリーム・クートゥア」に姿を見せた石井は、クートゥア本人の案内でジム施設を見学。クートゥアから「きょうはジムは休みだが、練習したいなら施設を使っていいよ」と勧められると、待ってましたとばかりに石井が口を開いた。
「ランディさんにテクニックを教えてもらいたい。スパーリングしたいです」
いきなりのスパーリング直訴にさすがの前世界王者もあ然。だが、その熱意に圧倒されたのか「すぐに着替えてくるから」と苦笑しながら承諾した。クートゥア自身が全くの新人を指導することは異例中の異例だ。北京五輪で金メダルを獲得してから135日。舞台を畳から金網リング“オクタゴン”に替えても、石井の練習に対するアグレッシブな姿勢は変わっていなかった。
直接指導では、まずは打撃から寝技に持ち込むテクニックを伝授された。続いて行った軽めのスパーリングでは、試合を控えていないため万全な体調ではない前王者が相手とはいえ、寝技で上になり自らコントロール。五輪の金メダリストの看板はダテじゃないところを見せつけた。
約2時間、みっちりと汗を流した石井は「ランディさんとやりたかった。技術練習とスパーリングをしての2時間はドリームでした。スパーリングでは肌と肌を合わせて格闘技のいいところを勉強しようと思った。活力をもらいました」と力業で勝ち取った異例の“即日入門”を満足そうに振り返った。
午後にはUFCのイベント「UFC92」を観戦。「凄い。より一層(オクタゴンに)上がりたい気持ちが強くなった。UFCに行けるか行けないかじゃなく、行きます」と決意を新たにしていた。大会後にはジムでの石井の練習をビデオで確認したUFCのオーナーであるロレンゾ・フェティータ氏から「経験を積めば十分通用するしトップにもなれる」と太鼓判を押された。若手選手の育成イベント「ジ・アルティメットファイター(TUF)」への出場が打診されていることにも「いいアイデア」と賛同を得た。
さらにロレンゾ氏の代理人と約3時間の話し合いを持ち、UFC側が石井との独占交渉権を持つことで合意。UFC入りへ大きく前進し、石井も「ランディとのスパーリングで高い評価をしていただいた。超うれしいです。百聞は一見にしかず、です」と喜びをあらわにした。3泊5日のUFC観戦を石井自身は「UFCって本当にいいものですね」と映画評論家の故水野晴郎氏でおなじみのフレーズで振り返った。来年1月には再び渡米し本格的にUFCへの道を歩み始める。
By スポニチ
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