WBC世界フライ級タイトルマッチ(23日、両国国技館)暗い世相に元気を注入だ! 王者・内藤大助(34)が11回、激しい乱打戦を制して挑戦者・山口真吾(29)にTKO勝ち。4度目の防衛に成功し、自身が持つ日本人選手の世界王座最年長防衛記録を更新した。来春にも予定される5度目の防衛戦はWBC(世界ボクシング評議会)の指示で、同級1位選手との指名試合が内定している。
下がらない。腰を落として、踏ん張った。内藤が両ひじを高く張り、頭を下げて左右フックを連打する。空振りでもかまわない。迫力満点の“カマキリ殺法”で攻めて出た。
11回、左フックから右を打ち下ろしてダウンを奪い、さらに手を休めずに連打。34歳が無尽蔵のスタミナをみせつける計32連発! レフェリーストップを呼び込んだ。それでも、内藤は「オレ、体力はあるけど、ボクシングの才能はやっぱりないわ」と、苦笑いが広がった。
8回終了時、最大6ポイント差をつけた王者に、セコンドはポイントアウトを指示。だが、打撃戦を望む内藤に迷いが生まれ、10回には相手の右フックでグラつく場面も。11回のKO決着は「自然に出たパンチ」でねじ伏せた。
世界的な金融危機の影響を受け、日本の名だたる大企業も悲鳴を上げている。そんな暗い世相をはね返す壮絶な闘いをみせたかった。内藤は、最近耳にすることが多い「派遣切り」に心を痛めているのだ。23歳のころ、鍋ややかんを製造する工場で当時派遣社員だった内藤も「契約更新と思っていたら、ある日、首を突然切られた。次の日から職がなくなって本当に困った」。4回戦ボクサーのファイトマネーは、アマチュアで活躍した有名選手でもない限り、10万円に届かないのが実情。それでも、世界王者になる夢を捨てずに耐え切った。
世界を制するまでは、時給900円で週5回、レンタカー店に勤める内藤と、喫茶店で働く夫人の真弓さん(35)の報酬と合わせて月収約12万円。一家3人でぎりぎりの生活だった。傍らにいた夫人を見やり、「今のオレがあるのは奥さんのおかげ。来月24日が彼女の誕生日なので」。24日には、クリスマスと誕生日プレゼントを買いに行くという。
V5戦は来年3月以降、WBCの指示で同級1位ポノムルンレック・クラティンデーンジム(タイ)との指定試合が内定している。だが、宮田博行会長(42)は「交渉しだいで(指名試合を)もし延ばせるなら、ビッグマッチをはさみたい。興毅? 当然候補の1人です」と言い切った。WBC世界同級3位、亀田家の長男・興毅(22)=亀田=との対戦実現へ。王者は「今は休むことしか考えないよ」と受け流したが、この男は“国民の期待”を知っている。
By サンスポ
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